
一日が「自分のもの」になるのは、何時からですか。
起きて、身支度をして、満員電車に乗って、会社に着く。ようやく一息つく頃には、朝のいちばんいい時間は終わっています。あなたの一日が本当に「自分のもの」になるのは、何時からでしょうか。奪われている朝を、数えてみます。
働き方・キャリア

毎朝の満員電車がつらい。乗り換えのたびに消耗する。そんな日々が続くと、「いっそ会社の近くに引っ越せば全部解決するのでは」という考えが頭をよぎります。実際、通勤時間が片道15分まで縮めば、生活はかなり変わるはずです。
ただ、結論から先にお伝えすると、職場の近くへの引っ越しは「効く人」と「あとで後悔する人」がはっきり分かれる選択です。家賃や住環境、そして数年先のキャリアまで含めて考えないと、せっかく動いたのに割に合わなかった、ということになりかねません。
この記事では、通勤を短くするための引っ越しに潜む落とし穴を率直に整理したうえで、向くケースと向かないケースを示します。そのうえで、「通勤を短くする」よりも一段根本的な選択肢についても触れていきます。
通勤時間が減ること自体は、まぎれもないメリットです。問題は、その通勤短縮と引き換えに差し出すものが、思っているより大きいことがある点です。
オフィスが集まるエリアは、当然ながら住居費の相場も高くなります。同じ予算なら、職場に近づくほど部屋は狭くなり、築年数は古くなり、設備のグレードも下がっていく、というトレードオフが生まれます。
在宅で仕事をする時間がある人ほど、この影響は無視できません。通勤が短くなった代わりに、家にいる時間の快適さが下がってしまっては、トータルで暮らしが良くなったとは言いにくいでしょう。「通勤の苦痛」を「住環境の窮屈さ」に置き換えただけ、という後悔はよく聞かれます。
職場の近くに住む最大の価値は、その会社に通っている間しか続きません。ここが見落とされがちな点です。
転職して勤務先が変わったり、部署異動でオフィスが移転したりすれば、せっかく手に入れた「近さ」は一瞬で消えます。残るのは、割高な家賃と、新しい職場には遠い住まいだけ、ということも起こりえます。キャリアの流動性が高まっている今、数年単位で同じオフィスに通い続ける前提は、以前より置きにくくなっています。
子どもの学校や保育園、配偶者の職場、親の介護。住む場所は、自分の通勤だけで決められるものではありません。家族の生活が別の場所に根を張っているなら、自分の都合だけで引っ越すのは現実的でなかったり、家族の誰かに新たな負担を強いることになったりします。
「自分の通勤は楽になったが、配偶者の通勤が長くなった」「子どもの転校で負担をかけた」というのは、家庭全体で見れば差し引きゼロ、あるいはマイナスになりかねません。
意外と軽視されがちですが、引っ越しには相応のコストがかかります。敷金・礼金・仲介手数料、引っ越し業者への支払い、家具・家電の買い替え、各種住所変更の手続き。一般に、賃貸の初期費用は家賃の4〜5ヶ月分が目安とされ、職場に近い割高な物件を選ぶほど、この初期費用も比例して膨らみます。お金だけでなく、時間と気力もかなり消耗します。
通勤時間を取り戻すために動いたのに、初期費用の回収だけで何年もかかる、というケースも珍しくありません。「通勤短縮で浮く時間」と「引っ越しで失うお金と手間」を、一度きちんと天秤にかけておくべきです。
落とし穴を並べましたが、引っ越しが正解になる人もいます。判断を整理しておきましょう。
ここまでは「通勤を短くする」前提で話を進めてきました。けれどNoTrainがいつもお伝えしているのは、その前にもう一段、根本的な問いを立ててほしいということです。
それは、そもそも毎日通う必要があるのか、という問いです。
通勤を短くする引っ越しは、家賃・住環境・転職リスク・引っ越し費用といったコストを払って、通勤を「ゼロ」ではなく「少し」にする選択です。一方、フルリモートや出社頻度の低い働き方に移れれば、引っ越し費用も家賃アップもかけずに、通勤そのものを大きく減らせます。住む場所の自由度はむしろ広がり、家族の事情にも合わせやすくなります。
特にビジネス職は、場所に縛られにくい仕事です。資料作成や打ち合わせ、営業企画やバックオフィスの多くは、オンラインでも十分に成立します。「現場仕事ではないのに毎日出社している」なら、引っ越しでオフィスに近づくより、出社の必要が少ない環境に移るほうが、コストもリスクも小さく、効果は大きいことが少なくありません。
ここで一つ注意したいのが、求人票の「リモート可」をそのまま信じないことです。リモート可と書かれていても、実態は週3〜4日出社、というケースは現実によくあります。NoTrainでは、求人の原文にあたって出社頻度を確認し、「通勤ゼロ」「週1通勤」「週2通勤」といった独自の軸で実態を見極めています。引っ越しを検討する前に、「そもそも通わずに済む選択肢があるか」をフラットに比べてみてほしいのです。
会社の近くに引っ越して通勤を短くするのは、条件が合えば有効な一手です。ただし、家賃の上昇、住環境の窮屈さ、転職で立地メリットが消えるリスク、家族の事情、引っ越し費用。これらを差し引いてもなお得かどうかは、人によって大きく変わります。
そして、「通勤を短くする」の手前には、「通勤をなくす」という、よりコストの低い選択肢があります。引っ越しを決める前に、一度この可能性も机に乗せてみてください。視野を広げたうえで選んだ住まいなら、後悔はぐっと減るはずです。
通勤の悩みを根っこから解きほぐすヒントを、NoTrainのニュースレターでも毎週お届けしています。あなたのキャリアの選択肢を広げる一通として、よければ登録してみてください。

起きて、身支度をして、満員電車に乗って、会社に着く。ようやく一息つく頃には、朝のいちばんいい時間は終わっています。あなたの一日が本当に「自分のもの」になるのは、何時からでしょうか。奪われている朝を、数えてみます。

家族に当たってしまう。些細なことでイライラする。それはあなたの性格のせいではなく、毎日の通勤で神経をすり減らしているせいかもしれません。通勤ストレスが人柄や人間関係にまで及ぶ話を、データとともに考えます。

一度でも通勤のない生活を経験すると、多くの人が「もう元には戻れない」と言います。それは甘えでしょうか。それとも、体と生活が新しい基準を知ってしまっただけでしょうか。戻れない感覚の正体を、静かに掘り下げます。