
働き方・キャリア
会社に見せるためだけの身支度に、毎朝どれだけ使っているか。

朝、起きてから家を出るまでの時間を、思い浮かべてみてください。顔を洗い、髭を剃り、あるいは化粧をして、髪を整える。シャツにアイロンをかけ、スーツやきれいめの服に着替え、身だしなみを鏡でチェックする。これらにかかる時間は、合わせてどれくらいでしょうか。人によっては、30分、あるいはそれ以上かもしれません。
ここで一つ、問いかけてみたいのです。その身支度の多くは、いったい誰のための準備でしょうか。自分が心地よくいるためというより、その大半は「会社で人前に立つため」の準備ではないでしょうか。今日は、この毎朝の身支度という、数えられていないコストについて考えてみます。
身支度の多くは「人に見られるため」の準備
もちろん、身だしなみを整えること自体は、社会人として大切なことです。清潔感は、相手への敬意でもあります。でも、正直に考えてみると、毎朝の身支度のかなりの部分は、自分のためというより、他人の視線を想定したものです。
もし今日、一日じゅう誰にも会わないと分かっていたら、同じだけの時間をかけて身支度をするでしょうか。おそらく、しないはずです。スーツに着替える必要も、きっちり髪をセットする必要も、フルメイクをする必要もない。私たちが毎朝の身支度にかけている時間の多くは、「人前に立つオフィス仕様の自分」を作るためのものです。それは仕事の中身とは関係のない、見た目を職場向けに整えるためのコストなのです。自分の快適さのためではなく、見られることへの備えとして、私たちは毎朝それなりの時間を使っています。
その時間は、どこにも数えられていない
やっかいなのは、この身支度の時間が、どこにも数えられていないことです。労働時間には含まれません。当然、給料も出ません。通勤時間ほど話題にもなりません。でも、確実に毎朝の生活を圧迫しています。
始業から逆算して、通勤時間を引いて、さらに身支度の時間を引くと、起床時刻はぐっと早くなります。通勤という見えないコストの手前に、身支度というもう一つの見えないコストが積まれているのです。しかも、削られているのは時間だけではありません。まだ眠い頭で、着る服を選び、身だしなみを整える。その一つひとつに、わずかとはいえ気力を使います。一日の始まりの、いちばん貴重な時間と集中力を、仕事の中身に入る前の準備で削っている。それが毎朝、当たり前のように繰り返されています。
「オフィス仕様の自分」を作る労力
服装や身だしなみを職場向けに整えることには、時間だけでなく、心理的な労力もかかっています。きちんとした服を着て、隙のない見た目を作るのは、いわば毎朝、鎧を身につけるような行為です。
その鎧は、人前に立つためには必要かもしれません。でも、鎧を着る作業そのものは、仕事の成果を一ミリも生みません。見た目を整える労力と、実際に成果を出す仕事とは、本来まったく別のものです。それなのに、オフィスで働くというだけで、この二つが毎朝セットで求められます。着替えて、整えて、それから電車に乗って、ようやく仕事にたどり着く。仕事を始める前に、私たちはもう一仕事終えているようなものです。その準備の労力は、誰にも評価されず、報酬にもなりません。
家で働くと、身支度は「自分のため」に戻る
在宅で働くようになると、この身支度のコストは大きく変わります。もちろん、家で働くからといって、だらしなくしていいわけではありません。オンライン会議もありますし、最低限の身だしなみは整えます。でも、その量と質が、まるで違ってきます。
満員電車で人前に立つための重装備は、もう要りません。きっちりしたスーツも、隙のないセットも、フルメイクも、毎日は必要なくなります。身支度が「人に見られるための準備」から、「自分が心地よく働くための最低限」に戻るのです。そのぶん、朝の時間と気力が手元に残ります。浮いた時間を、もう少し眠るのに使ってもいいし、朝食をゆっくりとってもいい。そのまま仕事の中身に集中してもいい。一日の最初の貴重な時間を、鎧を着る作業ではなく、自分のために使えるようになります。この差は、毎朝のことだけに、積み重なると大きなものになります。
見えないコストを、一度数えてみる
毎朝の身支度を、悪いものだと言いたいのではありません。身だしなみは大切ですし、装いを楽しむこと自体は素敵なことです。ただ、「会社で人前に立つためだけに」払っている時間と気力があるなら、それは一度、意識してみる価値があります。数えられていないからこそ、見過ごされているコストだからです。
このコストを軽くするために、キャリアや収入を手放す必要はありません。多くのビジネス職で、通勤ゼロや出社を大きく減らして働ける仕事は、実際に見つかります。気をつけたいのは、募集要項の「リモート可」という言葉が、必ずしも通勤のない毎日を意味しないことです。実際は週の大半が出社で、また毎朝の重装備に戻ってしまうこともあります。本当に身支度と通勤の負担を軽くできるかは、出社頻度の事実で確かめる必要があります。
NoTrainは、掲載する求人が実際にどれくらい出社するのかを、募集要項の原文まで一件ずつ確かめています。見えないコストから降りたい人が、事実にもとづいて働き方を選べるようにするためです。
まとめ
毎朝の身支度の多くは、自分のためというより、会社で人前に立つための準備です。その時間と気力は、労働時間にも報酬にも数えられないまま、毎日の朝を圧迫しています。通勤という見えないコストの手前に、身支度というもう一つの見えないコストが積まれている。しかもそれは、成果を生まない鎧を着る労力です。家で働けば、身支度は人に見られるための準備から、自分のための最低限に戻り、朝の時間と気力が手元に残ります。数えられていないからこそ、一度そのコストを意識してみてください。
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